体の中の水分にはさまざまな役割があり、バランスが崩れると体に影響が出ることがあります。
健康を保つために水分摂取がいかに大切かを、専門の先生に教えてもらいました。
冬も水分不足で脱水が起こるって本当ですか?
脱水は、水分の摂取量より排出量が上回った時に起こります。気温の高い夏は多量の発汗で急な脱水が起こりやすくなりますが、冬は皮膚や呼吸から水分を発散するにもかかわらず、のどが渇かないので水分摂取量が不足し、慢性的な脱水状態に陥りやすいといわれています。夏はもちろん、冬も意識的に水分を摂って、脱水状態にならないよう心がけましょう。
成人の体内の水分量は全体重の約60%といわれますが、高齢者は約50%に減少するといわれており、水分量が少ない分、成人より脱水になりやすい傾向があります。また、子どもの体内の水分量は成人に比べて多いのですが、代謝が良く発汗も多いうえ、自分で意識的に水分を摂取することが難しいため、脱水状態が起こりやすくなります。そのため、子どもや高齢者には、のどが渇く前に意識的に水分補給を促すことが大切です。
水分不足が骨や血管の病気につながることもあるって本当ですか?
体内のカルシウムは約99%が歯や骨にありますが、約1%は血管内にあります。体が脱水状態となり血管内の水分が減ると、同時に血管内のカルシウムも減少し、副甲状腺ホルモンが信号を出して歯や骨に含まれるカルシウムを血管内に放出して不足分を補おうとします。この信号が止まらず歯や骨から過剰にカルシウムが出てしまうと、骨がもろくなり骨粗しょう症を招くおそれがあります。また血管内に過剰に溶け出したカルシウムが血管の壁にくっついて動脈硬化が進み、脳梗塞や心筋梗塞などを起こす可能性も出てきます。これらを予防する方法として、カルシウムと、カルシウムの働きをよくするビタミンDおよびマグネシウムの摂取の他に、適度な水分の摂取が必要です。
水分は1日にどれぐらい摂取すればいいですか?
体内からは毎日2.5L程度の水分が排出されるといわれているため、その分だけ外から補う必要があります。1日3回の食事から約1L、飲み水から約1L、さらにタンパク質や炭水化物、脂肪などの代謝によって体内でつくられる約0.5Lの水によって、排出した分を十分補うことができると考えられます。
マラソン・スポーツジムなどでの激しい運動や精神的なストレスが原因で過剰に水分を摂取すると、体内から水分を排出する機能が追いつかず体に水分が溜まり、体内のナトリウムが薄くなって頭痛や嘔吐などの原因となる低ナトリウム血症を起こす可能性があります。水分補給は大切ですが、過剰な摂取や一度に大量の水を飲むことには注意が必要です。
効果的な水の飲み方はありますか?
1日3回の食事を前提に、加えて1日1L程度の水を飲めば、体内の水分のバランスが取れると考えられます。水分の摂取は、起床後や就寝前、そして食事前など、1日5~6回に分けて少しずつ飲むのがポイントです。「こまめにちびちび」を意識して水を飲むことを心がけましょう。
犬や猫なども、人と同じく水分摂取が必要です。基本は飲みたい時に飲めるように与えますが、体重1㎏につき100mLを超す水を飲む場合は何らかの病気が考えられ、注意が必要です。
【参考文献】石橋晃(2017)『犬を科学する』 養賢堂
水道水には、消毒のため塩素を入れることが法律で定められています。仙台市水道局では、水道水の残留塩素(水道水の中に残っている塩素の濃度)は、消毒の効果やおいしさの観点から0.2㎎/L程度は確保するよう調整しています。世界保健機関(WHO)のガイドラインによると、残留塩素が5㎎/L以下であれば、体重60㎏の人が毎日2Lを生涯にわたり飲み続けても健康に影響はないとされています。
これからの季節に欠かせない加湿器。各電機メーカーによると、加湿器に使用する水は水道水が推奨されています。水道水には塩素が入っており、カビや雑菌の繁殖を抑える効果が期待できるためです。ただし、水道水でも同じ水を長時間使用したり、ろ過や煮沸済の水道水は、塩素の効果が薄れる可能性があります。
水には「軟水」と「硬水」があり、その違いは硬度(水に含まれるカルシウムとマグネシウムの量)です。仙台市の水道水は硬度20~40mg/Lのまろやかで飲みやすい軟水で、和食と相性がぴったり。軟水は、お米の吸水を阻害するカルシウムの量が少ないので、ご飯がふっくら炊きあがります。また軟水で取った出汁は昆布の旨み成分が抽出されて美味しく、野菜の煮物もやわらかに仕上がります。あっさりとしてクセがないので日本茶を淹れるのにも最適です。
一方、欧米などに多い硬水はカルシウムが作用してアクがよく出て、肉の臭みをやわらげ、麺にコシを与えるので、シチューやパスタに向いていると言われます。
※世界保健機関(WHO)による分類を参考